第3章 猛毒の情火(五条視点)
翌日、ゆめかの元彼という生ゴミを当主パワーで叩き潰した。
彼女に二度と近づかない・連絡しないという念書にサインさせた。
それを破ったら、五条家が全力でその男と家族と親戚諸共を不幸のドン底に突き落とすと脅し、解決すべき問題の一つが片付いた。
その日は珍しくゆめかがお酒を飲みたいと言い出したので、居酒屋の方に足を延ばした。
酔って粗相しないようにと、慎ましい彼女はフルーツサワーをまだ1杯しか飲んでいなかった。
美味しそうに熱々の焼き鳥を頬張っている様子を眺めていると、僕がぼーっとしていたせいか、ゆめかが心配そうに顔を覗き込んでくる。
「悟、あんまり箸が進んでないけど……」
「……今日も任務多かったから?」
「なんで疑問形?体調悪い?」
「ゆめかが幸せそうに食べてるなーって、考えながら眺めてただけ」
「うう……そんなにまじまじと見られると照れる」
酒でほわっと染まった頬を手で押さえ、ゆめかは恥ずかしそうに微笑んだ。
やはり、この子を失うなんてもう考えられない。
僕の胸中など知る由もない目の前の恋人は、屈託なく笑う。
その後も食欲がなくて、ゆめかに終始心配をかけた。労ってもらえるのが正直嬉しい。
早めに食事を切り上げ、夜道を手を繋ぎながら他愛もない会話をして2人で歩いた。
途中、小さな公園と自販機があったので、「もう少し話したい」と伝えるとゆめかも察したのか、頷いてくれた。
2人で公園のベンチに腰を下ろして、それぞれ買った缶ジュースを一口飲む。
僕の言葉を待っているようにゆめかがこちらを見た。本当は聞きたくなんかないけれど、聞かないと前に進めない。
「ゆめかは、僕のこと好き?」
本当に情けない。彼女に聞いた瞬間、手が震えた。
平常心を装っていたけど、声も震えていたかもしれない。
さぁ、どんな返事がくるんだと息を呑んで待つと、ゆめかが一考してから口を開いた。
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