第3章 猛毒の情火(五条視点)
そして、彼女に求め、求められ、付き合い始めて一月が過ぎようとしていた。
任務から帰ってきた夜分、急に甘いものが飲みたくなった。
高専内の自販機に向かうと、よく見知った人物の気配がした。目隠しを上げて確かめながら声をかける。
「硝子も休憩?」
「……まぁ、そんなとこ」
ブラックコーヒーの缶を開ける硝子の横で、僕が激甘ココアのボタンを押す。
そういえば、と思い出したように彼女は缶から口を離した。
「夢野が医務室に来てるのは知ってる?」
「ゆめかの行動は全部把握してる」
「……サラっと怖いこと言うな」
僕の返答に硝子が少し考えている。
ゆめかに何かあったかと心配になったが、それとはまた違う問題で胸がザワつくことになる。
五条に話して良いと許可はもらっている、と前置きをして硝子が話し始めた。
「夢野から経口避妊薬の処方を頼まれた」
「けい……何?」
「男にはピルって言った方が分かる?」
「あぁ……」
クズのような思考だと自覚しているが、ピルと聞くと避妊効果が高く、男としては中出しし放題のイメージがある。
「こっちが医者とはいえ、オマエとの性生活について相談される身にもなれ。五条が常にベッタリだから、婦人科に行きにくいってよ」
ちなみに行動を全部把握してるのも彼女は知ってるぞと、苦い顔をした硝子に注意される。
仕込んだGPSがゆめかにバレたか。更にサイズが小さいものの購入を本気で検討しよう。
「なんでまたゆめかがそんなこと……」
と呟いて、心当たりがありすぎてフリーズする。
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