第3章 猛毒の情火(五条視点)
そして、その日の夜。
結局、一刻も早く会いたくて、任務が終わった時点でゆめかに連絡してしまった。
僕の術式で呪霊ごと貴重なオブジェを吹き飛ばしたらしく、伊地知が各所に連絡している様を横目に、彼女の返信をソワソワしながら待った。
そのまま流れで直接待ち合わせになり、計画もクソもなくデートが始まったのは猛省すべき点。
酒が入らない食事をした帰りの夜道、ゆめかから僕の手の小指を緩く握ってきて、お互い変に照れてしまい、しばらく無言になってしまった。
付き合い始めの学生カップルか。
自分らしくない行動への苛立ちも、ゆめかと目が合うだけでどうでも良くなった。
「悟の手、あったかい」
「ぎゅっとしたら、もっとあったかいかもよ?」
「やだー、悟にセクハラされるもん」
そう言いながらも、腕に手を回して体を寄せてくるゆめかに触れないなんて地獄だ。
崩壊しそうな理性を保ったまま、お触り無しでイチャつくのは到底無理そうだ。
また酔わせてしまおうか。
「夜景の見えるバーにでも行こうかな」
「悟はお酒飲めないから、バーだと退屈しない?」
「甘いノンアルくらいあるでしょ」
正直、気位が高いすました美人よりも、いつも機嫌が良さそうに笑ってる子の方が断然良い。
彼女もそうで、どこに連れて行ってもゆめかはキラキラした瞳で喜んでくれるので、行き先も考え甲斐がある。
服やアクセサリーは自分で悩んで買いたい派だし、花は任務で出張もあるから世話できないし、宝石や香水も興味ないらしい。
呪術師だから、楽しい思い出や記憶の方が欲しいそうだ。
任務で子供を一人助けることが出来なかったと、辛い記憶を思い出して涙ぐむゆめかの手を強く握り返すことしか僕には出来なかった。
全部、僕が祓除出来るなら彼女の悲しむ顔は減るだろうか。
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