第3章 猛毒の情火(五条視点)
ギシリとベッドが揺れる。着替え終わったゆめかがベッドの端に座って僕を見た。
「時間、空いたら連絡下さいね」
朝日を受け、彼女の黒目が輝いて神々しく見えた。
「一緒にご飯食べに行きたいです。その後は……五条さんが行きたい所に連れて行って下さい」
まだ頬が色付いているゆめかに、はにかみながら微笑まれ、思わず僕も無言で何度も首を縦に振った。
僕の希望が通るなら、それは彼女を抱くためにラブホテル直行も有りなのだろうか。
ここ最近、隙あらばゆめかとヤることばかり考えている。セックス覚えたての中防かと心のなかでセルフツッコミを入れる。
もはや下半身に脳が付いてるんじゃないかという状態に、自分でも呆れてしまう。
「ゆめかが名前で呼んでくれたら、倍速で任務頑張る」
寝そべったまま、彼女の指に僕の指を絡ませながらねだると、ゆめかが瞳をパチパチと瞬かせた。
少し視線を下げてから、
「恥ずかしいから、一回だけなら」
と彼女が首を傾げて微笑む。
「……悟、任務頑張ってね」
呼ばれた瞬間、ブワッと胸が甘くざわついた。
好きな人に名前を呼ばれるのが、こんなに幸福で満たされた気分になるなんて。
もっと、もっと聞きたい。
もう一回呼んで、とゆめかを後ろから抱きしめて甘える。早く早くと急かすと、ひそかに笑う気配がして彼女の華奢な肩が揺れた。
「”呪術師最強 ”が形無し」
それは君の前だからだ。
「ゆめかの前では最弱だから」
弱いところも情けないところも全部見せるから、君のすべてが欲しい。その無垢な笑顔も僕だけに向けて欲しいとさえ思う。
「今なら私でも悟を倒せそう」
彼女に名前を呼ばれると、洗い立てのタオルに包まれているような、ふんわりとした至福に満たされる。
胸の奥が優しくゆるく撫でられるような心地良さに、思わず頬が緩んでニヤけてしまう。
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