第2章 中毒ロマンス(五条視点)
最近、任務を詰め込んだ日常を送っていて、私生活がおざなりだった。自慰行為さえする余裕もない。
彼女の髪から香るシャンプーの残り香に、一瞬だけ裸を想像して下半身が反応してしまう。
気づけば、唇を重ねていた。
想像通りの柔らかな感触に、舌をねじ込んでしまいたくなる。
「ん……っ、ふ」
鼻から抜ける甘い声に、腰が熱くなる。
「……はぁ……っ、おにい、さ……」
何をされているのか、彼女は意識がついていってないらしい。胸を押し返され、くぐもった声を洩らしながらイヤイヤと首を振られ、僕の何かに火がついた。
「や……ん、っ」
親指で口をこじ開け、涙目になって逃げようとする彼女に深く口付けた。
舌を絡ませて、歯列をなぞり、上顎の裏をくすぐるように舐めると抵抗が弱まる。
「あ……っ、はぁ……」
洩れる吐息からアルコールが移ってくる。
それすら、この時には興奮する材料だった。後頭部を押さえて、彼女の逃げる舌に執拗に絡んだ。
「……っ、はぁ……」
角度を変えながら甘い声が洩れたところを攻めると、やりすぎたのか、舌先を歯で軽く噛まれた。
反射的に唇を離すと唾液の糸が引く。彼女は肩で息をしていた。ハァハァと息が上がっている中、涙目の相手に睨まれる。
「お兄さん、もう嫌い」
と、拗ねたように呟かれた。プイッと顔を背けられて、こちらが軽くショックを受ける。
じゃれて許しを請うように、首から耳の裏にかけて鼻先を擦りながら「ごめん」と低く囁くと、彼女の肩がビクンと震えた。
耳が弱いのか。落ち込んだ気分から一転、弱点を見つけたとほくそ笑む。
「僕のこと嫌い?もうバイバイする?」
彼女の耳介に口唇を触れさせたまま問うと、
「まだ、ヤダ……」
か細い声で返答があり、少し安堵した。
休憩のための移動を提案すると、控えめに頷いてくれる。合意だと解釈して、最寄りのホテルに彼女を抱えてチェックインした。
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