第2章 中毒ロマンス(五条視点)
酒と興奮状態のせいで呪力の流れが乱れているが、恐らく同業だ。
ようやく同業者とかち合わない店を見つけたと思っていたのに。
自覚はしているが、僕の白髪に碧眼は割と目立つ容姿だ。呪術師で五条悟を知らなければモグリとさえ思ってる。
他の術師と飲む店が被ったとしても、相手がこちらに興味がなければ好都合だが、高専関係者だと声を掛けられることもしばしば。
煩わしいのは勘弁。どうしたものか。
「命がけなのに滅多に昇給しないし、ブラックだし、夜中3時に駆り出されるし!自白なんて私が強制しなくても、濡れたタオルでホッペぶっ叩けば吐くっつーの!」
「あらあら内容が大変。濡れたタオル痛いものね。ゆめかちゃんの職業聞いたことないけど、警察官か何か?」
「ちーがーうー!人権なんて警察官よりミジンコだよ?ナイフ持った立てこもり犯なんてフワフワのテディベアだし!びっくり妖怪のテーマパークだよ!そんな仕事なの!」
どんな仕事だよ。
横で聞いていて、心の中でツッコミを入れる。
確かに、凶悪な呪霊や呪詛師なんかと比べると、妖怪も立てこもり犯も可愛いものだ。
胸焼けがするくらい甘いコーヒーに口をつけつつ、2席ほど隣の椅子で管を巻いている女を眺めた。
目が覚めるような美人ではないが、それなり。化粧がほぼ取れているが、素材は悪くない。
「ひっく……私だって頑張ってるのに……」
口を尖らせながらしゃくりあげては、合間にチョコレートの粒を口に放り込んでいる。
まるでいじけている子供のようだ。
騒ぎ疲れたのか、女もトーンダウンしたらしく、マスターがカクテルグラスを手にこちらへ来る。
「おまたせ。だいたい聞こえたと思うけど……あの子、付き合ってた彼に一ヶ月前にプロポーズされたばっかりだったの。
仕事が忙しいのを理由に浮気されてて、もちろん修羅場。じわじわと精神的にきてるみたいだから、相手してた」
特殊な仕事はパートナーの理解がないと難しい。そう哀れむ口調でマスターも話すが、所詮他人事の調子だ。
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