第5章 ご主人様のお気に召すまま【前編】
これ以上喋るなと悟の口を手のひらで塞ぐと、隙をついてペロリと生温かい彼の舌が指を舐めた。
びっくりして「ひゃっ」と私が声を上げると、してやったりとした笑い声が聞こえる。
子供のような悪戯をしてくる悟が無邪気に笑うので、それ以上何も言えなくなってしまうから不思議だ。
じゃれ合いながら、目的の階までたどり着くと、ようやく床に足を付けることができた。
先頭を行く悟に手を引かれてホテルの一室に入ると、驚くほど広い。
部屋の中心に大きな段ボール箱が置いてあった。
「悟、あれ何?」
「あれは今日の衣装」
思ったより作成に時間がかかったらしくて、見るのは悟も今日が初めてらしい。
箱を開けるのかと思いきや、隣のベッドルームへ直行する。
部屋に置かれた大きくて豪華なダブルベッドには、金糸が刺繍された綺麗なレースの天蓋が付いていて、お姫様が使うような素敵な寝床だった。
だが、彼とこれからすることを考えると、自然と顔に熱がこもる。
「ゆめか、コートを脱いでベッドに座って」
耳元で悟に囁かれて我に返る。
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