第5章 ご主人様のお気に召すまま【前編】
ちなみに一つ下の階と最高階も人払いしてあるから、あとで夜景を見に行こうかとお誘いを受ける。
それならば貸し切りは最高階だけで良いじゃないかとツッコミを入れると、
「メイドプレイは65階でやって、夜は最高階で夜景見ながら寝るんだよ」
さも当然のように、悟は言い放つ。
毎回、金持ちの道楽は理解出来ないと思う。
彼曰く、任務でほぼ休みなしで、五条家のお金なんて使う暇がないんだから、使える時は思いっきり使うものらしい。
駅で高級スイーツまとめ買いしたってたかが知れてる値段なんだから、と悟は口を尖らせた。
変わらずお姫様抱っこされたまま40階で降りると、次のエレベーターを待っていた他のお客さんからも微笑ましいといった顔で見られ、顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。
今すぐ悟の腕から降りたかったが、やっぱり離してもらえなかった。
そのまま65階へ行くエレベーターに乗り込む。
「今日、ゆめかはここに来たくなかった?」
彼に身を預け、ぼんやりとしていると、不意に悟から問われた。慌てて、そんなことはないと首を振った。
ただ、私が勝手に彼との色々な違いを実感しているだけだ。
そんなことを言えるわけもなく、黙ったまま悟に体を擦り寄せた。
「一回、普通にゆめかを抱きたい」
「そういうの、外で言わないの」
エレベーターの中とはいえ、公共の場でそういう発言は控えてもらいたい。
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