第5章 ご主人様のお気に召すまま【前編】
「どうせなら、ゆめかがやったことない事とかは?初めてのことなら僕が教えてあげられるよ」
「この間、脱力して動けない私のお尻までちゃっかり犯した男が何を言う」
「ゆめかのお尻の初めて、僕が貰っちゃったもんね」
おかげで行為後はしばらくお尻の違和感が取れなかった。
私が睨みつけると、悟は心底嬉しそうに笑い、ソファに身を預けてココアを飲んでいた。
こちらをしばらくの間じーっと見つめていた青い瞳がきょろりと動き、悪いことを思いついた子供のような表情をした時、正直言って、良い予感はしなかった。
「じゃあさ……猫耳と尻尾つけたメイド服のゆめかに、ご奉仕されたいな」
やっぱりか、と私ががっくりと肩を落とす。
去年よりレベルアップしている要求に、今年も私の心の中にブリザードが吹き荒れる。
「ゆめかの髪色に合わせた猫耳と尻尾を特注すれば……」
「今年のメイド服は黒とピンクが良いか……あとニーハイと……」
と、何やら呪文のような、聞いてはいけないような内容のひとりごとが、スマホを弄りながら愉しそうにしている悟の口から漏れている。
私は、メイド服は去年のものでも良いのに、悟は全部特注で新調するつもりだ。これだから変態の金持ちは困る。
「悟、一つ聞くけど……尻尾はメイド服に付いているんだよね?」
不安でしょうがない私が訝しげに問うと、彼は無言でにっこりと笑顔を見せるだけだった。
それはもう、私には不安しか残らない悟の表情だった。
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