第4章 お嬢様の仰せのままに
達する直前に寸止めされて、まるで首にナイフを突きつけられたかのような、切迫感が私を追い詰める。
動きたいのに動けない。きっと今自分から動いたら、階段を転がり落ちるように、取り返しのつかないところまで堕ちる。
「今日、僕は君の執事だ。命令してよ、ほら」
この人は悪魔だ。
笑顔で飴と鞭を使い分けて、ターゲットを確実に落としにかかる。長らく忘れていた、彼のドス黒い本性が垣間見える。
いつものように青い瞳を細めて優しく微笑んで、濡れた口唇を重ねてくる。
ついばむように、唇の感触を楽しんで、軽く吸い付いて戯れて、そっと私の舌に寄り添って、唾液ごとさらう。
もはや為す術もない。
私の鼻から甘い声が漏れると、そこを舌先で刺激されて、口内から背筋、背筋から腰の深部までぞわりと甘美な刺激が走る。
「ふ、ぁ……」
もう、気持ち良いし、どうでもいいや。
抵抗する気力も無くなり、ポキリと私の心が折れる音がした。
「んっ……奥がムズムズして苦しいの……悟のでいっぱいイカせて」
悟の首に腕を回して、腰を反らせながらグリグリと結合部を押し付ける。
快楽に堕ちた私の全面降伏のサインに、
「お嬢様の仰せのままに」
と、応えた悟の声が嬉しそうに上擦る。
そこからはもう覚えていない。
何時間連続で交わっていたのか、体に力が入らなくて、カラカラになった喉に悟の口移しで水が注ぎ込まれる。
そこからまた深く口付けをして、再び繋がった。
擦りすぎて股がヒリヒリして少し正気が戻ったが、発情した彼の艶っぽい囁きで耳から犯され、また淫らな地獄へ引き戻される。
彼の名前を呼んで、好きだと言いながら縋り付いて、私は考えることを放棄した。
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