第4章 お嬢様の仰せのままに
悟が腰を引いてズルリと膣から詮が抜かれると、収まりきらない精液が溢れ出た。
ずっと押し込まれていたものが居なくなった喪失感に、私も喘ぎなのか吐息なのか分からない声を上げて四肢を脱力させる。
目眩がして、頭がグラグラとした。
「さとる……」
掠れた声で求めて腕を伸ばすと、体が軋むほど強く抱きしめられる。
「ゆめか、僕のゆめか……」
彼の汗の匂いと、うるさいくらいの鼓動と、ベタベタの私の髪を優しく撫でる大きな手と、体の芯を疼かせる甘い声。
それらを堪能しながら、私は心地好さに目を細めた。
「ゆめか、これからずっと、一生甘やかすから覚悟していてね」
一生、というワードを聞かされると、もう逃げられないのだなと観念する。
これほど盲目的に愛してくれる男性は今後の人生の中で二度と現れないだろう。
気の毒な程に一途で、不器用な愛情の伝え方をするこの人を放っておけないとさえ思う。
もうすでに出会った瞬間から、底なしの愛の呪いは始まっていたのかもしれない。
まさに藻掻けば藻掻くほど沈む沼のようだ。
愚痴は硝子に聞いて貰えば良い。
広くて大きい背中に腕を回して抱きしめる。
私がいるだけで彼の心の平穏が保たれるのであれば、あまりにも多くのことを背負っている彼の背中を守っていけるのであれば、私の身ひとつ捧げるなど安いものかもしれない。
「悟……私、そばにいるから」
私の言葉に、彼が頷いた気配がする。
「死ぬまで、悟のそばにいるから」
彼がもう一度頷いてくれる。
「だから、安心して」
部屋の窓から見える空はもう白み始めている。
子供をあやすように、彼の背中を撫でた。
両手で抱えられないほど、とてつもなく大きな愛情をもらった誕生日。
初めから逃げ道などなかったと私は苦笑を浮かべ、悟の名前を呼んではその肌に頬を擦り寄せた。
END.