第4章 お嬢様の仰せのままに
私が言葉にして伝えたことで悟も気付いたのか、ほんの少しショックを受けた様子だ。
眉尻を下げて呆然とした顔をする彼に、私は話を続ける。
「悟を不安にはさせたくないから、その……ちゃんと目に見える形で将来を約束しても良いかなって考えているけど……」
口約束ではなくて、私が彼の傍を離れないと法的に約束する方法は一つある。
その意図に気づいたのか、悟の耳が急に赤くなり、口元を手で覆った。
「ゆめかさぁ……このタイミングで、逆プロポーズかます?」
「え、いや、その……そういうことじゃ……いや、そういうこと……?」
不安解消の提案をしただけのはずが、妙な空気になってしまい、居た堪れない気持ちになってしまった。
じわじわと襲ってくる恥ずかしさに、手で顔を隠して彼に寄りかかる。言うべきは今じゃなかったなと思った。
「ま、ゆめかはそれくらい腹を括ってたってことか」
でもそれは僕から言いたかったんだけど、と残念そうに悟が呟くので、こっちの恥ずかしさが倍増する。
穴があったら即入りたい。
「うう……ごめん、なんか間違えた……」
軽率な言動と忸怩(じくじ)たる思いで、今すぐにでも逃げ出したい。
けれど、彼に伝えないと、また私一人で悩みそうだったので、話し合うのは今日で良かったかもしれないとも思う。
二人で赤面したまま沈黙が流れる。
「……こんな時に悪いんだけどさ」
先に口を開いたのは悟だった。
「どうかした……え?」
お尻に硬くて熱いものが擦り付けられた。
→