第4章 お嬢様の仰せのままに
「んん?ちょっとちょっと待て……倦怠期?僕のこと飽きた?」
倦怠期という言葉だけで、マイナス思考の脊髄反射で反応した悟に縋りつかれる。
掴まれた腕に彼の指が食い込んで痛みが走る。
お願いだから最後まで話を聞いてと再度必死に諭し、
「要するに……地に足をつけて二人の関係を考えられるようになったってこと。日常生活の中で悟に直して欲しいこともあるし、ここは好みが合わないなって思うこともある。『これから』を考えるからこそ、浮かれたままじゃいけないことだってあるでしょ」
だって来年も再来年もその先もずっと一緒に居たいじゃない、と想いを伝えて笑いかける。
悟はずっと私に執着するし、過保護に甘やかすだろうし、それの何が悪いのかと本当に理解できないようなので、彼の考えを変えるのは難しい。
ならば、私が歩み寄りながらも妥協点を見つける。
ストレスが溜まりすぎて、可愛さ余って憎さ百倍になる前に、己の気持ちの整理をしなければならなかった。
「だから……たまにでいいから、私一人で別の場所に泊まって気分転換したい」
高専の寮に私の部屋を登録して時々そこに泊まるとか、それだけでいい。一人で過ごす時間が欲しかったのだ。
悟は私の様子を見て甲斐甲斐しく気を回して動くけれど、それもいきすぎると、些か監視されているような気分になる。
「僕はいつでもゆめかと居たいけど、ゆめかは違うって?」
「うーん……悟のことは好きだけど、四六時中ベッタリは好きじゃないの」
今回のことで、愛情の濃度は一緒でも、想いの重さの違いと依存度の違いがはっきりしてしまった。
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