第4章 お嬢様の仰せのままに
バッと身を起こし、反射的に私の肩を持って自分から引き剥がし、険しい表情でじっと見つめてくる。
「ゆめか、わかれ……」
「だーかーらー、人の話を最後まで聞いてよ。悟と別れる話じゃないから」
無下限のない悟の頭に手刀を振り下ろす。
私がハッキリと否定すると、じゃあ何なんだと文句を言いたそうな不満気な顔をした。
今から別れようと思っている相手と、こんな濃い絡みをするわけがない。
「察しろ」なんて子供じみたことは口にはしないけれど、少し考えれば分かるでしょうに。
腹いせにムニッと彼の頬を摘んで、痛くない程度に左右に伸ばすと、張り詰めていた空気が和んだ。
女の私より手触りが良いんじゃないかと思いながら、ムニムニと悟の頬で遊ぶ。
「それで、ゆめかの大事な話って?」
何故か嬉しそうな彼に問われ、私は悟が任務で不在の際に硝子に相談をしたことから話を始める。
悟が嫌いになったわけではないけど、時々一人になりたいこと。たまには悟の同伴なしで出かけたいこと。
悟が過保護すぎて嫌気がさしてるけど、口喧嘩では勝てないから不満を溜めていたこと。
最近、悟と体を重ねることが義務みたいになっていて苦痛に感じることもあること。
それらを硝子に相談したら、
『それ、ゆめかだけ倦怠期に入ったんだろう』
彼女は至極冷静に返答してきた。
ぐちゃぐちゃと一人悩んでいたけれど、その言葉でストンと腑に落ちた。通りで、恋にのぼせて今まで見えてなかった彼の欠点が目につくわけだ。
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