第1章 私と坊やと、雨のち雨。
というか、なんで私は気に入られているんだ。
謎だ。
悪い気はしないけど、常に抱っこを要求してきたり、一緒にお風呂に入りたがったりするのはいささか考えるものがある。
世話係にやってもらえ。
抱っこされている坊やは下手くそな鼻歌を歌いながら私の後ろ髪をいじっている。
何が楽しいのかわからないけど、坊やの機嫌がいいから良しとしよう。
坊やを迎えに行くために部屋に行こうとしていたけど、坊やの方から来たから、そのまま玄関へと向かう。
草履を履かせて、私もまた草履に足を通す。
手を繋いで門前に止めてある黒塗りの高級車へと乗り込んだ。
車に乗り込み、隣に座る坊やを見れば足をぶらぶらとさせていた。
私の視線に気が付いて彼は楽しそうににんまりと笑う。
天使。
かわいい。
女の子みたい。
かわいい。
癒し。
私はペンキを頭から被ったような白い髪の毛に手を伸ばして、くしゃりと撫でた。
東京から京都まで約6時間と少し。
新幹線を使えばあっという間なんだろうけど、いつどこで誰に狙われるかもわからない坊やがいるため、車での移動となった。
休憩を挟みながら漸く京都へ着いた。
時刻は既にお昼を過ぎていた。
昼ごはんは先ほどサービスエリアで済ませた。
お子様ランチが気にくわない坊やとの攻防戦は、ギリギリのところで私が勝った。