第2章 私と坊やと、雨のち曇り。
「そうか。言えばいいのか」
なんでこんな当たり前のことを思いつかなかったんだろう。
となればすぐに行動。
私は襖を軽く叩いて、静かに開けた。
「!!」
「なんですか、悟様の今はお勉強中ですよ」
「すみません。ちょっと坊やに伝言を」
「おれに?」
首をこてんと傾げる坊や。
小動物みたいでかわいい。
今はどんな勉強しているのかわからないけど、散らかったテーブルの上を見る限り真面目に受けていないということだけはわかった。
「少し買い物に行ってきますね」
「え⁉おれも行きたい!!」
「勉強があるでしょうが」
「つまんねえもん」
唇を尖らす坊や。
次期当主がそんな事言ったらだめだろう。
まぁ、でもなりたくてなるわけじゃないからそう思うのも仕方ないか。
「すぐ戻ってきますよ」
「やだ、おれも行くの!!」
頬を膨らませて私の足にしがみつく坊や。
女中が今にも私を殺す勢いで睨んでいる。
私は小さくため息を吐いた。
「坊や」
「なに」
「実は私が今から買ってくるのは、坊やへのご褒美なんだよ」
「ごほうび?」
「そう。いつも頑張ってる坊やへのね。私からのプレゼント。だから楽しみにしててよ。ワクワクしながら私のこと待ってて」
「ん~……」
説得はできないかぁ。
それでも、プレゼント、と言う響きに心揺らいでいるように見える。
あと一押し、ってところか。