第2章 私と坊やと、雨のち曇り。
部屋を出て私は台所で夕飯の準備をしている女中に、夕飯は部屋で取ると言う事と少しだけ遅くしてほしいという旨を伝える。
「何故です?」
「悟様がまだ就寝中でして」
「あまり寝かしすぎないでくださいな。夜眠れなくなりますし、夕飯も遅くなれば悟様のご成長に悪い影響を与えますゆえ」
「わかりました~」
「まったく、こんなだらしない人が側近だなんて……」
ぶつくさ文句を言う女中に適当に謝って、再び部屋に戻る。
去り際ベッて舌を出してやった。
あーもう、うるさいうるさい。
そこらへん飛んでる羽虫の方がまだマシだ。
そう思いながら部屋に戻ると坊やの泣く声が聞こえて来た。
急いで襖を開けると、坊やはベッドの上でボロボロと大粒の涙をいくつも零している。
坊やも私を見つけると、私の名前を呼んでベッドから降りようとするが、上手く降りることができずに床にべちゃりと落ちてしまった。
ごちん、とおでこがぶつかる音がして何が起きたのかと一瞬泣き止むが痛みが襲ってきたのだろう、坊やはまた大きな声で泣き喚いた。
「痛かったね、たんこぶになってないかな」
「うわぁあああっ!!~~っ!!」
「ごめんごめん、急にいなくてびっくりしたね、寂しかったね」
腕をめいっぱい伸ばしす坊やに駆け寄り小さな身体を抱きしめた。
おでこを触りたんこぶができていないか確かめる。
少し赤くはなっているけどたんこぶはできていないみたい。
よかった。