第1章 私と坊やと、雨のち雨。
それを知ってか知らずか坊やずっと私がいいと騒ぐ。
こめかみに青筋を立てた女郎が「………………お着換え、ここに置いておきますねぇ」とがんぎまった目で私を睨んでそう言った。
怖い、怖いよ。
私、死ぬかもしれない。
深いため息を吐いていろいろ諦めた私は坊やを抱き上げる。
「わかりました、一緒に入りましょう」
「えへへ、やった」
か~わ~い~い~。
懐かれるのは悪くない、嫌な気もしない。
ただ、その後にくる報復が怖いだけだ。
すれ違うお仕え様を見れば、今にも私を殺しそうな勢いだ。
坊やがいるから殺されないだけで。
え、もしかして坊やって私の護衛でもあったの?
そしたら一生離さないんだけど。
こうしてふざけてでもいないとやっていけねえよ、マジで。
お仕え様たちに軽く会釈をして、坊や専用の風呂場へと足を運んだ。
「坊や。お風呂担当の人が要るんだから、その人と一緒に入らなきゃ」
じゃないと殺されるんだよ、物理的に。
坊やの頭を洗いながら私は静かに言った。
「やだ」
「なんで嫌なのよ」
「……だって、俺を洗う手つきが変なんだもん」
「…………それは……えぇ、そ、んん~、そっかぁ」
言葉に詰まった。
いやいやいやいや、それはダメだろ。
何を考えてんだ、あの人たちは。
頭を抱えるよ、まったく。
4歳の子供に手を出すんじゃないよ。
どんだけ坊やの懐に入りたいんだ。
下手したら幼児虐待だぞ。
つっても、警察が介入できるわけもないんだけど。
治外法権もいいとこだぞ。