マイナス、のちゼロ距離センチ【WIND BREAKER】
第2章 スーパーヒーロー、その名はボウフウリン
「ん……?」
「!」
柘浦さんの前に出た途端、彼の視線がにれさんから私に移る。そしてバチリッ、と私達の視線が交わった。……それは、柘浦さんにも私のことが見えている証拠で――。
「っ、桜さん!」
このやり取りはもう4回目だけど、やっぱりこの瞬間は心の底から嬉しい気持ちが込み上げてくる。だから私は、悩んでいた時に一歩前に進む勇気をくれた桜さんにお礼を言うため笑いかけた。
「ありがとうございます!」
「っ、!?な、なんでオレに感謝してるんだよ……!?」
「私に勇気をくれたからです!」
「は、はあっ……!?……そ、そうだったのか?」
「はい!そうだったんです!だからありがとうございます!」
「…………ぉ、ぉぅ」
小声ながらも、顔を赤く染め上げながら私の感謝の気持ちを受け取ってくれた桜さん。その様子を見ながらふと思う。多分だけど、彼は人から感謝されるのに慣れていないのではないだろうかと。今までの態度から見ても、それが窺える。
(……でも、どうしてだろう?)
桜さんは、私の助けを求める声に真っ先に反応してカツアゲから男の子を助けたり、私の記憶を取り戻す手伝いを申し出てくれたりと、優しさ溢れる人だ。きっと今までも、困っている人を見つけては手助けしていたに違いない。それなのに、感謝されるのに慣れていない。
……桜さんが初心だからと言われればそれまでだけど、でも何だかまるで、自分なんかがお礼を言われるわけがないと思っているような、そんな感じがする。
少し気になるけど、そんなデリケートな部分を聞く勇気が今の私にはないし、今は柘浦さんに事情を説明するのが先決だ。だから私は、生まれた疑問を一旦振り払ってから柘浦さんに向き直り、そこで気づいた。彼の様子が変わっていることに。
「っ……」
「?」
柘浦さんは怒った表情から一転して、顔を青くしながら口元に手を当て、身体全体を震わしていた。あまりの変わりように首を傾げていると、今度は震える身体を小さく縮こませて、「ごめんやで……」と小声で謝ってきた。