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マイナス、のちゼロ距離センチ【WIND BREAKER】

第2章 スーパーヒーロー、その名はボウフウリン


「よかった……目を開けてくれて……。何度呼びかけても反応しないから心配したよ」
「え……」

…………そういえば、名前を思い出そうと躍起になる時、彼らに伝えていなかった気がする。……いや、気がするじゃない。そうだった。
それに気づいて慌てて桜さんとにれさんの様子も確認すると、2人も蘇枋さんと同様安堵した様子で私を見ていた。

「ご、ごめんなさい……!」
「い、いえ!全然大丈夫っす!……でも、突然どうしたんですか?」
「えっと、実は全力で名前を思い出していました」
「は……、へ、平気なのかよ?頭、痛くなるんだろ?」
「は、はい!これに関しては大丈夫でした!」
「よかった……。それじゃあ、名前を思い出すことができたのかい?」
「はい!そうなんです!」

私の肯定の返事に、蘇枋さん達は「おお!」と嬉しそうに声を上げて、まるで自分のことの様に喜んでくれた。その反応に何だかむず痒い気持ちになるけど、それ以上に心がポカポカと温かくなる。

「それじゃあ改めて、君の名前を教えてくれるかな?」
「はい!」

自分の名前を言うために、私は頭の中でさっき聞き取れた名前をもう一度思い浮かべる。


『詩音ちゃん』


……その声は、鈴を転がした様なかわいらしい声で、とても親しみが込められていた。まるで、友達の枠を超えた、親友を相手にしているかの様に。
でも、今の私にはこの声の人物を思い出すことはできない。そもそも、この名前が自分の名前なのかすら分からない。……だけど、これは私の名前なのだと、確信を持って言える。そこに疑念も違和感もなかった。


「詩音……私の名前は詩音です!よろしくお願いします!」

もう二度と忘れない様に、心に刻み込みながら自己紹介する。
だって、名前は自分自身を表す証明なのだから。















「桜君達おったあああああ!!!」
「!?」


お互いに自己紹介し終えた後、ここでずっと話してるのはあれだからと、私達はひとまず移動することに決めた。その際、カツアゲをしていた大人達に、これ以上悪さをしないよう、蘇枋さん達が釘を刺していた。
そして、路地から出た時だった。とてつもない大声が辺りに響いて、私の鼓膜を震わせたのは。

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