マイナス、のちゼロ距離センチ【WIND BREAKER】
第1章 光差す向こう側で
「…………え?」
あの光の向こうに進めば声の人物が分かる……そんな気がしたから、自分の勘を信じてここまで来た。
でも、どうやら現実は、物語みたいにそう上手くはいかなかったらしい。
「この時間帯だけの特別価格だよ!!」
商品の特別価格が始まったことを知らせる服屋さん。
「そこの奥さん!今なら全品30%引き!今が買い時!」
「じゃあ……これとこれ、いただこうかしら」
「まいどあり!!」
上手いこと通りすがりの女性に買い物させる八百屋さん。
「おっ、兄ちゃん!これ持ってってくれ!いつも世話になってる礼だ!」
「いいんすか?ありがとうございます!」
学ランを着た男の子に、笑顔で何かが入った袋を手渡すおじさん。
目を開けた先、謎の声の人物の代わりに目の前に広がったのは、傍から見ても分かるほどの活気に溢れた商店街だった。
「………………え?」
呆然とすることしか出来ない私の横を、一陣の風が通り過ぎ
――――チリンッ。
頭上で鈴の音が静かに鳴り響いた。
まるで、私を歓迎するように。
光差す向こう側で