マイナス、のちゼロ距離センチ【WIND BREAKER】
第1章 光差す向こう側で
「……っ!……っ!」
(……?)
真っ暗。
視界一面真っ暗闇の中、誰かの声が聞こえてきた。でも、内容までは聞き取れない。
「……っ!!……っ!!」
何を言っているのか分からないけど、声の主が必死に何かを叫んでいるのは分かる。自身の喉が枯れるまで、声を出し切る勢いだ。
「……っ!!!……っ!!!」
(……あなたは、誰?)
相手を知りたい。
漠然とそう思った。
どこの誰で、どんな性格をした人なのか。男性なのか女性なのか。あらゆる疑問が溢れ、知りたい欲がどんどん強くなっていく。
「……っ!?……っ!!」
でも、相変わらず何て言っているか分からないし、視界も黒一色のまま何も映り込まない。それを酷くもどかしく思う。
(……!)
そんな中、突然目の前で一筋の光が差し込んだ。その光はとても小さいのに、キラキラと力強く輝いている。
(……もしかしたら)
絶対的な保証はどこにもない。
でも、あの光に向かって進めば声の正体も分かる……そんな気がしたのだ。
(……よし)
だから私は突き進む。幸い足は動くようで、それにホッとしながら真っ直ぐ歩を進める。
進むにつれ、だんだんと大きくなっていく光。それに比例して、元から強かった輝きもどんどん眩くなっていく。
そしてついには、目も開けてられないほどの眩い光が視界一面に広がりーーーー