マイナス、のちゼロ距離センチ【WIND BREAKER】
第2章 スーパーヒーロー、その名はボウフウリン
「えっと、少し話が逸れましたけど、自己紹介の続きをしたいと思います。コホンッ、オレは楡井秋彦っす!よろしくお願いします!」
脱線してしまった会話を戻すために、次に自己紹介したのはにれさん。満面の笑みで告げられた挨拶に、心が穏やかになり「よろしくお願いします」と頭を下げながら思う。
(そっか……にれさんは楡井さんって言うんだ)
楡井さん、楡井、さん。
……頭の中で、ずっとにれさんと呼んでいたからなのか、何だかあまりしっくり来ない。
「あ、あの、楡井さんのこと、にれさんって呼んでもいいでしょうか?」
「はい!もちろん構いませんよ」
「ありがとうございます!」
(よかった……)
にれさんから快く承諾を貰いホッ、とひと息ついた。
「では、次は桜さんです!」
「お、おう。……桜遥だ」
「はい。よろしくお願いします」
ひと言名前を告げるだけの、簡素な挨拶。
それを、何だか桜さんらしいな、と思いながら頭を下げてチラッ、と彼の様子を窺う。顔が少し赤らんでいて、私に対して怒っていたり、気まずい様子は見られない。……でも、あの時謝罪を受け入れて貰えなかったのは事実。
(もう一度、きちんと謝った方がいいよね)
これからたくさん、桜さん達にはお世話になるのだ。有耶無耶のままにするのは、よくないに決まってる。
そう思った私は、もう一回今度は勢いよく頭を下げた。
「あの!桜さん、ごめんなさい!」
「はあ!?と、突然なんで謝ってるんだよ……!」
「あっ、えっと、桜さんのこと傷つけてしまったので……」
「!……っ、」
理由を言えば、桜さんはハッ、とした様子を見せて、眉間に皺を寄せながら視線を逸らした。
あの時と同じ反応にやっぱり駄目なのかな、と諦めかけたその時、桜さんの逸らされていた視線が私に戻った。それに驚いていると、彼の口が小さく開いて言葉が発せられる。でも、声が小さくて聞き取れない。
「あの、ごめんなさい。聞き取れなかったので、もう一回お願いします」
「うっ…………だ、だから、もう謝らなくていいっつったんだよ……」
「!」