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マイナス、のちゼロ距離センチ【WIND BREAKER】

第1章 光差す向こう側で


「いや、でも、あの2人に限ってそんなことは……」
「あ、あの……!私、ちょっと様子を見て来ます……!」
「えっ!?」

もし軽い怪我じゃなく、命に関わることになったら、と思うと気が気じゃない。それに、本当にそんなことが起きてしまうのなら、彼らに助けを求めた私の責任だ。
居ても立ってもいられず、蘇枋さん達がいる路地の奥に向かって駆け出した。




「ま、待ってください!様子ならオレが見に行きますから、あなたは……っ!?」

走る私を止めるため、にれさんが私の腕を掴もうとしたけど、すり抜けたことに驚愕していたなんて知らずに。






路地の奥に着いて、最初に目についたのは地面に倒れ伏す男達。誰もが力無く呻き声を上げて、身体を動かせない様だった。

「これ全部、蘇枋さんと桜さんが……?」

にれさんの言葉を信じていなかったわけじゃない。だけど、実際にこの惨状を目の当たりにして、本当に彼らは強いのだとより実感した。

「2人はどこに……」

蘇枋さんと桜さんの無事を確かめるため、倒れている男達の間を通りながら辺りを見渡す。

「あっ……!」

歩いて数秒、奥の方でこちらに背を向ける形で立っている2人を見つけた。
彼らはお互い少し離れた所にいて、それぞれ男の人と対峙している。他に姿が見えないことから、どうやら最後の2人らしい。
……蘇枋さんも桜さんも、見たところ怪我を負っている様子は見られない。自分が想像していた最悪の展開にはなっていなくて、ホッと安堵のため息をついた。

「よかった…………ん?」

その束の間、視界の隅で何かが小さく揺れ動いたのが見えた。
それが気になり顔を向けると、地面にうつ伏せで倒れていた男の人が、入らない力を振り絞りながら顔を上げているところだった。その視線は桜さんに向いていて、弱々しくも忌々しげに瞳を歪ませている。そしてズボンのポケットにゆっくり手を入れると、そこから折り畳み式のナイフを取り出し、刃を出した。

「!?」

銀色に鈍く光るそれを目にして、一気に息が詰まる。頭に浮かぶは、さっきまで考えていた最悪の展開。
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