• テキストサイズ

リクエスト 裏短編集♡

第1章 夏油傑 奪ってでも欲しいもの


『傑っ‥待って‥痛いよ‥っ』





すぐに屋敷に連れ戻されて
今度は地下に続く階段をスタスタと降りて行く



ギュッと掴まれた手首がじんじんと痛む



「‥」



歩くスピードを緩めないまま
1番奥にある部屋に入ると今度はガチャりと扉の鍵を閉められる



『逃げてごめんなさい‥』




怒られると思って下を向くと優しく腕の中に抱きしめられた






「前は私が手放したのにね‥‥がいなくなったと思ったら息がつまりそうだった‥」




『っ‥‥』




優しく抱きしめられているその腕は小さく震えていて

長い前髪の隙間から見える顔は苦しそうに歪んでいた





こんなにも辛そうな傑の顔は
あの日以来で




思わずギュッと背中に手を回して私も傑を抱きしめる




『ごめんなさい‥‥もう勝手にいなくならないから‥』




悟と同じくらい背が高くて大きな傑の背中を
赤子をあやすように優しく撫でる



「傷つけたくなかったのにね‥結局はを泣かせてしまって‥‥本当に悪いことをしたと思っているよ‥」



『うん‥私も‥‥傑が辛かったのに助けてあげられなくて‥気付いてあげられなくて‥ごめんなさい』



「あんなに眩しい日々の中で‥皆に囲まれて‥それなのに気付けば私は心の底から笑えなくなっていた‥‥それでも、を想う気持ちは昔も今も変わらない」




『う‥ん‥』



過去の辛い事を少しずつ吐き出すようにして話す傑の声を聞いて
涙が頬を伝っていく




「愛しているよ‥」




ギュッと抱きしめていた身体が少し離れて



傑の大きな手が優しく頬の涙を拭い取って
触れるだけの口付けが交わされる




『人の命は戻ってこない‥‥傑のした事は一生をかけて償わなくちゃいけない‥‥でも私は‥傑の事を‥知りたいし助けてあげたい‥償えるなら一緒に‥』





そこまで話すと優しかった口付けが突然深くなって
掻き抱くように抱き寄せられる





「これだからは‥っ」





少し震える声は泣いているように聞こえた







勿論悟の事は大事だけど



悟には硝子もいるし
学長も生徒達だっている



今からでも
傑を救えるなら救いたい





またあの頃みたいに戻れるなら
/ 22ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp