第4章 七海健人 覚悟
七海side
『ッ‥』
腕の中に抱きしめた身体が車の僅かな振動にすら反応してびくりと揺れる
熱い吐息が首筋にかかって
理性がグラグラと揺らぐ
「さん‥呼吸が荒いですね‥」
車のミラー越しに心配そうにこちらを見る伊地知の顔が赤く染まる
急ぐ車のエンジン音に集中して
必死で気を紛らわせる
刻一刻と上がって行くお互いの体温
我慢の限界などもうとっくに超えていた
「もう着きますからね‥」
高専につくなり家入さんが駆け寄って来た
「一体何本飲めばここまでなるの‥?」
『はぁっ‥はぁ‥‥』
「さんは一本と少しですね」
「それだけ?!七海は?」
「数えてないので分かりませんが数十本ほど‥」
「っ?!ちなみに液体の色は?」
「濃いピンク色でした」
「味は?」
「とても甘い‥そうですね‥洋酒のような‥アーモンドの香りがしました」
「っ!!」
家入さんの目が見開かれる
「なにか困った事でも‥?」
「その手の薬の事は色々調べて来たけど‥その中でも1番厄介な薬みたいだな‥大抵の薬は身体は辛いが、時間の経過と共に楽になって行くんだけど‥」
「この薬は?」
「時間が経てば経つほど辛くなる。身体を重ねる事でしか解けない呪いみたいなもんだな‥」
ソファに苦しそうに横たわるさん
冷静を装って家入さんの話を聞いている自分自身も動悸がするほど苦しくなってきていた
「どうするかは任せるけど‥薬に対する耐性が著しく低いだと意識を失うかもしれない‥」
「迷う余地もありません」
職員用の寮に住んでいるさんの鍵を差し出した家入さんの手から
半ば強引に奪い取るように鍵をとって立ち上がる
「五条にだけはバレないといいけど」
「私もそれを願います。では、失礼します」
熱い身体を抱き上げて医務室のドアを出ると
今1番会いたくない人が目の前に立っていた
「誰にだけはバレたくないって?」
「五条さん‥」