第3章 両面宿難 終わらない続き
虎杖くんが寮にきて数日
気絶するように眠ってしまったけれど
目を覚ました時に少し様子がおかしい事に気付いた
おじいさんの事もあるし
急に引越しになっちゃって
転校とか色々あっという間に目まぐるしく変わってしまった環境
心配になって毎晩お部屋に通っていたんだけど
今日はとっても疲れていたみたいでお話ししているとベッドに倒れ込んで大きな寝息を立て始めた
『そりゃ疲れるよね‥わたしも少し‥』
すやすやと眠る虎杖くんの横に椅子を持ってきて
私も少し眠りについた
恵くんと仙台の高校へ向かったあの日
途中から記憶が途切れていて
気付けば医務室のベッドに横になっていた
後から家入さんに聞いた話によると
五条先生が助けに来てくれた時
私は致命傷を負う程の大怪我をしていたらしいけど
完璧な反転術式を誰かが施してくれていたようで一命を取り留めたとの事だった
その場にいたのは同じくボロボロの恵くん
あとは
そんな事が出来るのは
両面宿儺
うとうとと夢を見始めたとき
いつの間にか寄り添っていた身体がゆっくりと起き上がるのを感じる
さっきまでの気配とは違う
ひりつくような空気に息を呑む
黒い紋様が浮かび始めて
顔つきが変わる
気付けばベッドの上に引っ張られて
視界が反転していた
「悠二とは念の為、2人きりにならないように!いつ宿難が出てくるか分かんないからね〜!まぁ単純に、僕以外の男と2人きりになるの禁止ね?」
五条先生の言葉を思い出す
「俺か釘崎が一緒にいけない日は1人で虎杖のもとへ行かないで下さいよ」
恵くんに釘を刺された事も頭をよぎる
「娘‥確か‥と呼ばれていたな‥」
明るい虎杖くんの声とは違う
大人の男の人のような低くて囁くような声
『え‥あ‥‥虎杖‥くん‥?』
「ふ‥ははっ‥これはいい‥小僧も気が付いてないようだな」
『も‥もしかして‥‥す‥くな‥?』
殺されてしまうかもしれない
全身に感じる殺気だった空気に鳥肌が立って声が裏返る
「そう怯えるな‥殺すつもりはない」
次の瞬間
近付いてきた宿難と唇が重なり合った