第3章 両面宿難 終わらない続き
伏黒side
呪霊に捕まったさんを助けようと声をあげた途端に固いコンクリートごと突き破って外へ放り投げられる
頭を強く壁にぶつけて流れ出す血が生暖かい
顔は火照るのに
だらだらと血が抜けていって頭が全然まわらねぇ
離れたところには投げ出されてぴくりとも動かないさんの姿
助けに行きたいのに
動かない身体
回らない頭に苛立ちと焦りだけが溜まっていく
一緒に生きていたいと願ったのに
命をかけてでも守りたいと思ったのに
目の前で倒れているさんの元へ駆け付けることすら出来ない自分を呪いたい
「さんっ‥!」
頼む
生きててくれ
呪霊がぐったりとしたさんの方へ向かう
その時だった
飛び出してきた虎杖が呪霊を蹴り飛ばして素手で殴り続ける
「呪いは呪いでしか祓えないっ‥!お前じゃ勝てないんだ!」
「そんなこと言ってる場合かっ!それじゃちゃんもっ‥お前も死ぬだろうっ‥!好きになったばかりの女の子‥お前のことだって‥絶対に死なせたく無いっ‥!」
真希さんみたいな身のこなしで今まで普通に高校生活を送っていた虎杖が呪霊をボコボコに殴っていく
そりゃ俺だって
世界で一番好きなさんを死なせたくない
もう一度その姿を見ると灰色のコンクリートが真っ赤に染まり出していた
「さんっ‥!」
尋常じゃないほどの出血量に全身の血の気が引いて叫ぶように名前を呼ぶ
「ちゃんっ!」
必死に呪霊と対峙しながら虎杖も大声で叫んでいると意識を取り戻したのか指先がぴくりと動いた
逃げられるだけの体力が残っているのか
どれくらいの大怪我を負っているのかも分からないけどとにかく必死で叫んでいると虎杖が呪霊に捕まっていた
そんな虎杖を救おうと呪具に手を伸ばす姿に気を取られていると虎杖が大声を出した
「あるじゃねーか!全員助かる方法っ!」
「っ!?」
「俺に呪力があればいいんだろっ?!伏黒っ!」
怪しく光る月夜をバックに
特級呪物が空を舞う