第1章 夏油傑 奪ってでも欲しいもの
目を覚ますと目の前にすやすやと眠る傑の姿
『よかった‥‥ちゃんと‥いた‥』
艶のある黒い髪を撫でるとゆっくりと眠たそうに瞼を擦る
「おはよう‥目が覚めたかい?」
『うんっ‥』
「なんだか元気がないね‥?」
おいで?と優しく胸の中に抱き寄せられる
気付けばお互いに下着しか身につけていなかったから
直に感じる傑の素肌が暖かくて気持ちが良かった
『傑がどこかに行っちゃう夢みたの‥』
呪詛師になってしまった傑がたくさんの人に手をかけて
私達の前からいなくなってしまう
まるで現実に起こったかのようなリアルな夢で
本当に怖かった
「私はここにいるし、の事を絶対に離さないから心配しなくてもいい」
いつもは一つに纏めている長い髪がおろされていて
何も身につけていない上半身と相まってなんだかとっても大人っぽくてドキドキとしてしまう
『私たち‥‥なんで制服着てないの?』
傑を見上げるといつもみたいに優しい笑顔で柔らかく微笑んでいる
「昨日の夜ドロドロに汚れて‥ひどい任務だっただろう?が気を失ってしまって‥それで一緒にお風呂に入ったんだよ」
『そ‥そうだっけ‥‥?なんだか頭がモヤモヤして何も思い出せないの‥ごめんなさい‥お風呂も‥ありがとう』
何も思い出せないけれども
傑の言う通り大変な任務だったみたいで身体はぐったりと気怠くて
正直お布団から出たくないくらいだった
『硝子ちゃんと‥悟は?大丈夫だった?』
「あの2人は私達とは違う任務でね‥暫く戻らないらしい」
『そっか‥‥寂しいけど仕方ないね』
「そうだね‥暫く2人で楽しむとしよう」
そう言って私の前髪をさっと掻き分けるとおでこに優しくキスをして
傑が立ち上がる
「水をとってくるよ」
『それなら私がっ‥』
起きあがろうとした途端に腰から力が抜けてへたへたと座り込んでしまう
「昨日頑張ったから無理しなくていいよ」
『うぅ‥ごめんなさい‥』
「待ってて」
こうしていつも優しい傑は私を甘やかしてくれる
水をとりにいってくれる後ろ姿
なんだかいつもよりも背中が大きい気がする‥‥?