第6章 乙骨憂太 君の全てに嫉妬する
『え‥?乙骨くん?』
急に手首を掴まれたかと思うとそのまま走って帰っていってしまった
「重症かよ」
真希ちゃんがいつもみたいに髪をひとつに纏めながらハッと笑う
『えっ?乙骨くんどこか悪いの?!』
真希ちゃんが重症と言うくらいなのに私は全然気付く事が出来なかった
何か兆候はあったのかな
気付けなかった自分が情けなくて下をむくと頭をわしゃわしゃと撫でられる
「そんなんじゃねーから心配すんな」
『でもっ‥』
「まぁ‥が可愛すぎんのも罪だな」
「なになに‥俺のがどうかしたか?」
『パンダくん!おはよう!』
「あ〜朝からこの可愛さ‥たまらん」
ぎゅむっとふわふわのパンダくんに抱きしめられると
まだ寝癖が少し残ってる棘くんにも抱きしめられる
「おかかっ!」
「なんだよ棘〜独り占めはよくないぞ」
「はいはいそこまで‥授業間に合わなくなんぞ」
2人に抱きしめられた私をひょいっと摘み出して
今度は真希ちゃんの腕の中に収まる
「どさくさに紛れて真希もずるいぞ‥」
「しゃけしゃけ!」
「はっ!私はいーんだよ!行くぞ」
『う‥うんっ!じゃあまたあとでね!』
真希ちゃんに手を繋がれたまま2人に手を振って
自室へと戻る
「じゃーまたあとでな」
『うんっ!真希ちゃんもまたあとで!』
乙骨くんのことは心配だったけど
そんなこんなであっという間に時間は過ぎて
急いで用意をして教室へ向かった
そこにはすでに席についた乙骨くんがいて
ひらひらと手を振ってくれるからホッと胸を撫で下ろす
『よかった‥!体調悪くなったらすぐに言ってね?無理しちゃダメだよ?』
隣に座って顔を覗き込むと
顔が赤く染まる
「あ‥ありがとっ‥でも大丈夫だから‥」
『気付かなくってごめんね!』
手をぎゅっと握るとさらに顔が赤くなった
もしかしたらやっぱりお熱があるのかもしれないと心配になっておでこに手を当てようとすると
その手にするりと五条先生の指が絡められる
「ちっちゃい手‥子供みたいで可愛い」