第6章 乙骨憂太 君の全てに嫉妬する
乙骨side
高専内の寮の中
お寺のような寮はとても広く
洗面所も大人数で使えるほど大きい
少し隣とは距離のある蛇口を捻って
顔の火照りを覚ます為にも
冷たい水でバシャバシャと顔を洗っていると隣から突然甘い声が聞こえてくる
「?!」
ガバっと顔を上げて横をみると前屈みになって顔を洗っているちゃんの腰を掴んで身体を押し当てる五条先生の姿
「五条先生っ?!」
首にかけたタオルで顔を拭くこともなく慌てて声を上げると五条先生がお茶目にぺろりと舌を出す
「可愛いおしりが目に入ったから‥つい‥めんご!」
パッと両手を離すとようやく顔を洗い終えたちゃんがタオルで顔を拭いて先生の方を振り返る
『五条先生っ‥任務帰りですか?おはようございますっ‥!』
その顔はさっき僕に見せた可愛い顔と同じで
頬が少しピンクに染まっていた
こんな顔誰にも見せたくないのに
ちくりと痛む胸の奥
それと同時にもやっとしたものが頭の中を支配する
「そうそう〜疲れた任務帰りに可愛い生徒の顔がつい見たくなってね」
そう言うとちゃんの頭を優しくぽんぽんと撫でて
何事もなかったかのように手を振って帰っていった
「ちゃん‥」
このモヤモヤした気持ちに耐えきれずちゃんに手を伸ばそうとすると後ろからニヤりとした顔で禅院さんに声を掛けられる
「2人して早起きだな?」
『真希ちゃん!』
「ツナマヨ〜‥」
『棘くんは相変わらず寝癖がすごいね!2人ともおはよう!』
「おはよう真希さん‥狗巻くん」
「おはよ」
「しゃけ!」
洗面所に並ぶ僕たち
それぞれが顔を洗って
歯磨きをして
ぴょんぴょんと跳ねた狗巻くんの髪をちゃんが整えてあげる
これもいつもの光景なのに
『乙骨くん?』
「おかか?」
気付けばちゃんの手首を掴んでいた
「ご‥ごめんっ‥僕先に戻ってるね‥!」
嫉妬深い男は嫌われる
そう思うのに心の中のドス黒い感情は歯止めが効かなくなっていく