第5章 乙骨憂太 嫉妬
狗巻side
「棘!の事頼んだよ!今回の呪霊‥かなり厄介らしくて、本当は僕が行きたいんだけど‥終わり次第すぐに向かうから」
一度はいなくなった五条先生がサッと現れてそれだけ告げるとまたいなくなってしまった
先に車の後部座席に乗り込むとはぁはぁと息を切らしたが呪具を抱えて走ってくる
『棘くんっ‥お待たせっ‥』
「しゃけ!」
『今日も一緒だね!怪我しない様にがんばろうっ!』
にっこりと微笑む天使みたいな可愛さに思わず目を逸らすと運転席にいる補助監督と目があった
「2人とも本当に気をつけて下さいね‥お二人の事大好きなんで、僕‥心配で‥」
本当に心配してくれているのが伝わってきてグッと親指を立てる
死線はいくつも経験してきた
今回だって何があってもだけは守る
言葉が話せなくて誤解ばかりされて
周りから距離を置かれる俺には昔からだけが唯一の理解者だった
呪術高専に入ってからは大切な友達が出来たけど
好きなのは
命に変えても守りたいのは
だった
「では僕は他の現場に向かいますので‥くれぐれも2人ともお気をつけ下さい‥」
深く頭を下げる補助監督に2人で深くお辞儀をして五条先生が言っていた海辺の廃墟の前に立つ
禍々しい呪霊の気配
それに
何か嫌な感覚
べったりと纏わり付くような
なんとも言えない不快感
まるで大きな目に睨まれているような
いや‥違うな‥睨んでいるというよりかはもっと‥
隣のをみるとふるりと身体を震わせて呼吸が荒くなりはじめる
嫌な予感がして咄嗟に背中に隠した
「ツナマヨ‥」
背筋が嫌悪感でゾクゾクする
まるで視線で犯されているような
その視線は俺じゃなくて全てに注がれている
これは‥想像していたよりも厄介だな
そう思った時だった
ぬるりと視線に入った赤が背中に隠したの身体を掻っ攫った
「おかかっ‥!」
『〜ッ!?』
その時初めて目にした姿はまるで大きな蛸のような
四肢が触手になった呪霊の姿
しまった
そう思った時には手遅れだった