第4章 第二章「怪盗ヴァルツァー」
勝敗が分からないまま沈黙が続く中ガチャリと、ドアを開ける音が沈黙を破った。
「あれ? メルじょういたんだ。武久君少し相談が」
「ヘルグレ兄妹か。何の用だ」
武久君上司らしくクールに振る舞っているようですけど目が輝いてるし口角がものすごく上がってます! なんて分かりやすいんだ。
「やあ、リーダー。今日は相談があって来たんだけど。お取り込み中だったかい?」
「グレフェルちょうどいいところに来たね。僕はこれから帰るところだったんだ」
ここぞとばかりに僕はドアの方に走ってドアノブをひねった。
「待った」
「……離してくれるかい、ヘルゼル君」
「いやだね。こういう相談は話を聞いている人数が多い方が良いんだ」
「折角だから参加してよキミも」
ヘルグレ兄妹の笑みは相変わらず無邪気なくせして目がまったく笑ってない。
実を言うとヘルグレ兄妹武久君が苦手なんだよね。冗談通じないから悪戯を仕掛けると真に受けて変な行動おこしたり、悪戯がばれたときには千尋や香乃姉さんより怖いかららしい。
たとえば昔こんな事があった。ヘルグレ兄妹は水鉄砲で薫を狙って遊んでた。そして言った言葉がある。
「水だと思った? ブッブー! 正解は硫酸です♪」
とか
「硫酸だと思った? 違うよ
塩酸だよ~ん」
という恐ろしい悪戯があった。
それを見た武久君が薫をかわいそうに思いヘルグレ兄妹に悪戯を仕掛けた。そのときのセリフがこちら。
「硫酸? 塩酸? 水? ブッブー!
実弾でした~♪」
流石のヘルグレ兄妹も真っ青。近くにいた僕らも真っ青。
それ以来水鉄砲を使った悪戯を見ていない。
しばらく時間がたつと兄妹の目が若干うるんできた。これは、参加しないと流石にかわいそうな気がしてきた。
僕が話に参加して冗談を武久君が信じないようにフォローしてあげるほかないか。