第7章 薄夜の蜉蝣
こうして二人で色々な所へ出掛けては思い出を作り続けている。
どんな困難が待ち受けていたとしても、来年も再来年もずっと先も、私は傑の隣にいられますように。
そう願いながら、私たちは手を繋いだまま砂利道をゆっくり歩いていく。
「傑」
「ん?」
私が名前を呼ぶと、傑が顔をこちらへ向ける。
私は彼を見上げて微笑むと、小さな声で愛の言葉を囁いた。
それを聞いた彼は、私を嬉しそうに見つめると優しく微笑んだ。
その表情は柔らかくて甘ったるい。
愛おしいなと思って傑を眺めていると、そっと私の腰を引き寄せて顔を覗き込んでくる。
ちゃっかりキスしようとしてくる彼の頬を両の手で押さえた。
「夜は傑の好きな蕎麦にしようか」
「それは嬉しいな。ざる蕎麦で頼むよ」
口付けを阻止されて眉間に皺が寄ったのも束の間、私の提案に傑は嬉しそうに笑った。
傑の表情がコロコロ変わるのが面白くて、私は思わず吹き出してしまった。
そんな私を咎めるように鼻を軽く摘まんでくる男の手を、ぺしりと叩き落としたら、さらに強く引き寄せられた。
「蕎麦も良いけれど、ゆめも食べたい」
急に耳元で囁かれ、私の体温が否応なく上がる。
「そういうのは帰ってから」
と彼の胸を押し返して距離を置こうとするが、傑の力には敵わずに腕の中に閉じ込められてしまう。
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