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【呪術廻戦】薄夜の蜉蝣【R18】

第7章 薄夜の蜉蝣


電車が来るまであと五分。

貨物列車が通過するアナウンスが聞こえた。

線路の上を通って届く風は、生温いが気持ちいい。傑の手にぎゅっと力をこめると、彼も握り返してくれる。

「そうだなぁ」

まだ挨拶ネタを引きずる彼は、顎に手を当てて悩んでいるようだ。

そんなに難しいことを考える必要なんてないのに。私は傑を見上げながら、くすりと笑う。

「娘さんとお付き合いさせてもらってます、でいいじゃん」

冗談っぽくそう言ってみせると、傑は私をじっと見つめた。その瞳が真剣なものになっているのに気づいて私が首を傾げると、「違うな」と納得いかない様子。


やがて、何か思い付いたように口を開いた。

ちょうど貨物列車が通り過ぎようとしていた。



「           」


何か言った後、傑は照れ臭そうにしながら笑った。

列車の轟音で彼が何を言ったのか聞き取れなかったので、私は「聞こえなかった」と聞き返したのだけれど、傑はこれ幸いとばかりに微笑みながら、何も教えてくれなかった。

「もう一度言ってくれないの?」

そうねだってみたが、傑は笑みを浮かべたまま何も答えてくれない。

ケチ、と拗ねる私を宥めながら頭を撫でてくるので、私はそれ以上深追いしなかった。

「大人になったら言うよ」

そうはぐらかす傑。

一歳しか違わないのに、いつまでも子供扱いしてくるところが腹立たしいけれど、惚れた弱みというやつで何も言い返せない。

「ずるい」

私は頬を膨らませ、傑を恨めしげに見やった。

目を細めて、未だ線の向こう側の景色を眺めている彼の横顔を眺める。



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