第1章 背徳は蜜の味✿
部屋に着いてから、お兄ちゃんに背を向けてドアの鍵を閉めた。その時だった。
「えっ……」
突然後ろから抱き締められた私は、驚いて身動きが取れなくなってしまった。お腹に回された逞しい腕。制服越しでも分かるほど、背中から伝わる体温が熱い。
「悟が触れた場所を消毒しないとね」
「ん……っ」
チュッという音を立てて、耳にキスされる。それから、頬や顎のラインにも口付けられていく。
「おにい……んっ……」
振り向いて抗議しようとした瞬間、顎を掴まれて唇が塞がれた。そのまま口内を舌で蹂躙される。
歯列をなぞられ、上顎を舐められ、絡め取られた舌を吸われる。口の中から喉まで、ぞくぞくして気持ち良い。
お兄ちゃんの腕を掴んだ手に、思わず力が入る。
「……あ……っ」
息継ぎの合間に漏れ出る吐息。だんだんと力が抜けていく身体。頭が考えることを止めた。
ゆっくりと離れて行った唇が、お互いの唾液で濡れているそこを見て、恥ずかしくなる。
俯こうとしたところで、再びぎゅうと強く抱き締められた。私が諦めて力を抜くと、お兄ちゃんの手で、クイッと上を向かされて逃げられない。
「ゆめ……」
切なげな表情の傑お兄ちゃんが、じっと見つめてくる。私は大人しく目を閉じた。
「ん……」
再び重なる唇。角度を変えて何度も啄むような軽いものを繰り返してから、だんだんと深く侵食してくる。舌の付け根をスリスリと擦られて心地良い。
「ふぁ……っ、ん、ンッ……」
執拗に繰り返されるキスに、私は立っているのがやっとの状態になってしまった。力が抜けてガクリと膝が落ちそうになったところを、傑お兄ちゃんに支えられる。
ようやく解放され、必死で酸素を取り込む私の身体を反転させて向かい合うと、お兄ちゃんは再び私の腰を抱いた。
「さて、ゆめ」
いつもより数倍は優しい兄の声音に、嫌な予感しかしなかった。いつも通り微笑んでいるのに、静かに怒りを孕む彼の気配が、私たちの周りの空気を蝕む。
「もうすぐ、悟が私の隣の部屋に戻ってくる予定だ。そしてここは、ドア一枚隔てて向こうは廊下」
分かるね、と耳元で囁かれる。兄の指先で耳裏をなぞられ、無意識に体が強張る。
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