第5章 憂いとけじめの青
夕方になって、一日を終えてから高専の校舎を出る。
上の空すぎて、座学も呪力操作の授業も、集中していないと先生から怒られてしまった。
寮の自室に戻ってからも兄からの連絡は一切無く、心中穏やかにとはいかず、私の気持ちは沈むばかりだった。
シャワーを浴びてから、実家からもらった浴衣を出して眺めてみる。
五条先輩とのデートはお断りしたし、お義母さんには悪い気がするけれど、今年はもう着られそうにない。
「お兄ちゃんになら、浴衣姿を見せたいな」
独り言を呟きながら、手に持った浴衣を見つめてみる。改めて、浴衣が入っていた紙袋の中を覗き込むと、A4サイズの手書きのメモが入っていた。
「一人でも浴衣を着られる方法……か」
メモの内容を読み上げる。
丁寧にイラスト付きで書かれている内容に、お義母さんの愛情を感じて、こそばゆい気持ちになる。
よし、と一人で気合いを入れてから、立ち上がる。
先に髪をアップにしてから、パパっといつものように薄めの化粧をしたら、前準備は万端。
調整のための何枚かタオルを傍らに置き、メモを見ながら必要な道具が揃ってるか確認をする。
浴衣と一緒に、既に肌襦袢も用意してくれていて、まずはそれに着替える。
鏡を見ながら、羽織った浴衣の前を合わせて、
「えっと、合わせ目は左が上になればいいんだよね……」
と一人でブツブツ言いながら、四苦八苦しながら腰紐を巻いていく。
エアコンが効いている部屋なのに、額に変な汗が滲む。
おはしょりがアンバランスになったり、うなじのあたりが詰まってしまったりと、慣れない作業に苦労した。
何とか形にした私は、今度は帯を巻いて、作り帯のリボンを飾った後に脱力してベッドに座り込む。
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