第5章 憂いとけじめの青
嫌な想像ばかりが頭に浮かび、私は一人唸りながら机に突っ伏した。
結局、そのまま夕方近くになっても、お兄ちゃんからはメールも電話も来なかった。
放課後になり、一人で寮に戻りながら、夕食とお風呂を済ませる。ベッドに潜ってからも、メールのチェックをするが、やはり返事は来ない。
悪いことばかりが、頭でぐるぐると堂々巡りになる。
考え込んでいる内に、いつの間にか寝てしまっていたようで、スッキリとしないまま目が覚めた。
翌日、カーテンの隙間から差し込む朝日の光が、目が痛くなるほど眩しかった。
バッと起き上がって、反射的に携帯を確認したが、傑お兄ちゃんから連絡は入っていなかった。
歯磨きをしていても、着替えている最中も、ご飯を食べていても携帯が気になる。その度に画面を見ては、勝手に溜め息がこぼれた。
朝、いつもより早めに自室を出て、補助監督の方に予定をお伺いしたところ、お兄ちゃんは今日の任務には無事に間に合ったようで、その点はホッとした。
高専には寄らずに、実家から現場へ直行すると補助監督の方に連絡が入ったらしい。
「複数の任務の掛け持ちなので、夕方に終わる予定になっていますね。用事があるのであれば、私が伝言をお預かりしましょうか?」
「……いえ、急ぎではないので、直接兄に伝えます。お気遣いありがとうございます」
気を遣って下さった補助監督の方にお礼を言ってから、重い足取りで補助監督室から出て、廊下の窓に背を預ける。
傑お兄ちゃんに会えるのは、夕方以降になりそうだ。
「本当に大丈夫かな……」
ポツリと呟いた私の声は、賑やかな朝の喧騒にかき消されて消えていく。
今すぐにでも電話をかけて声を聞きたいけれど、任務の最中だと迷惑になると思い、ぐっと堪える。
携帯を握り締めながら、手すりに頬杖をついて、窓から見える青空をぼんやりと眺める。
すぐ教室に行く気にもなれず、私はぼんやりしながら暇な時間を潰した。
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