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【呪術廻戦】薄夜の蜉蝣【R18】

第5章 憂いとけじめの青


五条先輩がおもむろに私の方へと近付いてきたので、なじられるのだろうかと思ったけれど、そんなことはなく、ただ何も言わずに、じっと見下ろされる。

私はその険のある目から視線を逸らすことも出来ず、冷や汗をかきながら無言の圧を受け止め続けた。

「……後悔すんなよ」

一言そう言うと、五条先輩は私の横をすり抜けて歩き出した。金縛りが解けたように、私は咄嵯に振り向いて、その後ろ姿に向かって声を掛ける。

「五条先輩っ」

呼び止める声に足を止めた先輩だったが、振り返ることなく背中を向けたままだ。

私はその広い背中をじっと見据える。

ひらりと手を振って、五条先輩は「じゃあ、またな」と一言残し、私の前から姿を消した。

屋上に一人取り残された私は、脱力してその場に座り込んだ。五条先輩がどんな気持ちでいるのか、推し量ることなんて出来ない。

厄介事が無くなったというのに、夏空の下にうずくまる私の心中は、どうにも晴れなかった。

まるで、じりじりと照りつける太陽の光が、不甲斐ない私を責めているようだ。

私はコンクリートの地面を見つめたまま、しばらく動けないでいた。




悩みの種がまた一つ片付いて一件落着とはいかず。

午後、「実家に行ってくる」とメールが一通届いたのを境に、その日は傑お兄ちゃんからの連絡が途絶えた。

「大丈夫かな……」

朝の会話を思い出しながら、何の件で実家に帰ったなんて分かりきっていた。

きっと、家族会議が開かれて、私と傑お兄ちゃんが恋仲になることに対して、猛反対を受けているかもしれない。



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