• テキストサイズ

【呪術廻戦】薄夜の蜉蝣【R18】

第5章 憂いとけじめの青


夏空の下に佇む先輩は、相変わらずサングラスを掛けている。

真っ白いカッターシャツが昊天(こうてん)に映えて、きれいで眩しかった。

風に煽られて、白銀の髪がサラリと揺れている。

彼はこちらを振り向かず、柵の前に立って、遠くを見つめていた。

さながら、一枚の絵のようだと思いながら、私は恐る恐る歩み寄る。

「……あの、私、」
「あー、いいや。言わなくていい」

何か言わなければと口を開くと、先輩は遮るようにして片手を上げた。

いつもより低い声で、苛立ちを滲ませていて、その背中からは拒絶の意思を感じる。

怒っているのは明白だった。

「約束破って、ごめんなさい」
「別に、オマエに怒ってねーよ」
「でも……っ」
「ただ、ムカついてる」

彼は吐き捨てると、そのまま黙り込んでしまった。

しばらく沈黙が続く。風が吹いて、私の髪の毛を巻き上げた。

それすら気にならないほど、五条先輩の背中から目が離せなかった。

「いくら傑が好きだとしても、この先苦労するのは目に見えてるだろ」
「……わかってます。それでも、私はあの人を選びます。先輩に脅迫されても、それは揺るぎません」

私の答えに振り向いた五条先輩は、一瞬だけ、大いに不平だと言わんばかりの表情を見せた。

それから、私から視線を逸らすと、空を見上げて「そうか」と、ぽつりと呟いた。再び、沈黙が訪れる。

兄と私で話し合って、今の関係を家族へ打ち明けると決めたことを簡潔に伝えた。

それを聞いた五条先輩は、呆れたように溜息を吐いて、ガシガシと頭を掻きながら、「イカれてんな」と悪態をつく。

この選択に、微塵も後悔はしていない。

この恋が誰かを傷付ける罪になろうとも、私は地獄だろうと何処だろうと、あの人に隣にいると決めた。



/ 212ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp