第4章 決意の告白
彼の背中に回す手にそっと力を込めると、私の肩口に顔を埋められた。
「正直、悟が君を幸せにするなら、それも悪くないと思えた。だが、ゆめが私を選んだ現実に、心の底から喜んでしまっている自分が居て、自己嫌悪に陥ったよ」
昔から、品行方正で、無意識に白か黒かを求めてしまう節がある。それは、周りが望んだ兄の姿。
瞬時に様々なことを天秤にかけて、総合的な判断ができる理性的な人だけれど、完璧に本音を隠すところがある。
家入先輩はお兄ちゃんや五条先輩のことを『クズ』だと言っていたけれど、高専で性根を晒せる仲間ができたことに私は安堵した。
「お兄ちゃん、もっと貪欲になってもいいと思うよ?」
「これ以上、何を望めと言うんだい」
「例えば……そうだなぁ、たまにでいいから私に甘えてくれたりとか」
そう言うと、傑お兄ちゃんは「十分、甘えてるつもりだけど」と言いたげに、不思議そうに首を傾げた。
きっと、彼は無意識のうちに一線を引いている。
私の未来を潰さないようにしてくれている。
気遣いは嬉しいけれど、突き放されたようで寂しい。
もう少し頼ってくれても構わないのに。
お互い逃げ道を残したままの関係で、本当に幸せになれるわけがない。私も守られるだけの子供じゃない。
あなたと同じ世界を生きたいし、色々な感情を分かち合いたい。
「……私は頼りにならない?私は傑お兄ちゃんが望むなら、何だって叶えられるのに」
私にしてくれたように、私も彼の支えになりたかった。傑お兄ちゃんが抱えるものを、少しでも共有していきたい。
→