第4章 決意の告白
お兄ちゃんの力が強くて抵抗できない。
猫のじゃれ合いみたいに、平和な攻防戦をしつつも、私は話を続ける。
「おかげで、私も答えは出た。五条先輩には、自分の手を汚す覚悟はないみたいだし……」
だから、私に答えを委ねた。
動機と過程はどうであれ、最終的に私が五条先輩を選べば、妹思いの兄は大人しく引き下がると思ったのかもしれない。
なんて杜撰で、陳腐な思惑。取るに足りない。
「五条先輩や周りになんと言われようと、私の好きな人は一人しかいない」
そこまで言ってから、私は視線を上に向けて、真っ直ぐ傑お兄ちゃんの目を見て、はっきりと伝える。
この先もずっと、私はこの人のそばにいたい。
例えそれがどんな結末を迎えることになっても。
私の想いが届いたのか、「困った妹だ」と苦笑され、大きな手が私の頭をくしゃりと撫でた。
「それが、ゆめの答えかい」
「うん……お兄ちゃんはどう思ってるか聞かせて?」
傑お兄ちゃんはしばらく何も言わなかったが、「わかった」と言って、再び私の身体を抱き締める。
その腕はいつもより少しだけ力強かった。
その広い背中に手を回して抱き返すと、心臓の鼓動が重なるような感覚が心地良い。
私たちはお互いの存在を確かめるように、しばらくの間、無言のまま身を寄せ合っていたが、やがて傑お兄ちゃんはぽつりと呟いた。
「自分の感情を優先にして、私がこの関係に持ち込んだのに、ゆめには自由でいてほしいと思っていた。いつか、本当に好きな人ができたら、心から祝福してあげようとは考えていたんだ」
そう語る声色は、とても穏やかで、少し寂しげに聞こえたが、どこか自嘲気味な響きを帯びていて、心がざわめく。
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