第4章 決意の告白
私のために何を犠牲にしても厭わない姿勢を見せてくれるから、私もそれに報いたいと思う。
「お兄ちゃんが行くなって言うなら、私は五条先輩のところへ行かないよ」
「私が言わなければ、行くんだね」
「だって、約束したら守らなければならないって、子供の頃にお兄ちゃんが教えてくれたでしょ」
「……そうだったかな」
私の手首の拘束が解かれる。
お兄ちゃんは私の瞳を見つめながら、ゆっくりと指先で私のフェイスラインをなぞるように撫でる。
まるで硝子細工を扱うように、丁寧に触れられると、心が満たされていく。
けれど、その手つきは、いつもよりぎこちなくて、僅かに震えている気がした。
「悟を好きになった?」
そう問う、彼の声のトーンが落ちる。
「お兄ちゃんの親友じゃなかったら、ビンタかましてるだろうなって程度には嫌いかな」
私が努めて明るい声で言い切ると、傑お兄ちゃんは、フハッと吹き出して笑った。ここまでは聡明な兄の想定内というところだろうか。
「……悟に、もう少し優しめの対応はしてあげられないのかい?」
笑いながらの彼の問い。
私は”無理“の二文字を即答した。
入学から半日で地面に転がされた挙句、「こんなに弱っちぃのが傑の妹?冗談キッツー」と、デリカシーの無い発言をしてきた五条先輩との最悪の出会いを、私は忘れていない。
のそのそと動く温かな重みが、軽く私の上に被さってくる。
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