第3章 相互依存✿ (傑ルートへ)
正直、行きたくはない。
しかし、ここで断ったりしたら、それはそれで面倒くさいことになる。
「悟、その話はさっき終わっただろう。兄として、私は許可出来ないと言ったはずだ」
傑お兄ちゃんが呆れた様子で溜息を吐いた。
大体、五条先輩が世間一般の常識から外れたことをしようとする時は、傑お兄ちゃんや家入先輩がストップをかける。
割と独断で我が道を行く五条先輩が、珍しく自ら事前許可取ったのかと驚いていると、
「はぁ、過保護かよ。夕方に行って、夜8時までにはゆめを高専まで送り届けるって、珍しく俺が譲歩してるってのに。硝子もシスコンに何か言ってやれ」
「いいんじゃないの、五条がこんなに浮かれてるの珍しいし、夏油もゆめのデート毎に邪魔してたらキリないでしょ」
「う……浮かれてねーよ」
家入先輩に「浮かれてる」と再度からかわれ、ガタンと五条先輩が椅子から立ち上がって反論しているその横で、傑お兄ちゃんの顔色が変わった。
表情はいつも通りなのに、ピキッと額に青筋が浮かぶ。これはまずいと思った私は、慌てて間に割って入った。
「あ、あのね!五条先輩が夏祭り行ったことないから、一緒に行こうって話になったの!ほら、私も久しぶりに行きたいなって話になって……だから、えっと……」
焦って真っ白になっている頭をフル回転させて必死に弁解するも、当の兄は納得していないようだった。
さっきと同じ、ピリピリとした空気が流れる。このままでは、喧嘩になってしまう。
「お兄ちゃん、お願い」
そう言いながら、私が両手を合わせ見上げると、少しの沈黙を挟んで、傑お兄ちゃんは眉間に寄ったシワを親指の腹でこすりながらも「仕方がないな」と言って渋々了承してくれた。
「その代わり、ゆめに後で話がある」
非常に穏やかで静かに、傑お兄ちゃんが微笑みながら言う。これは過去に覚えがある。
本気でお怒りの時の声のトーンだ。
これは確実にお説教コースで、くどくど怒られるのかと内心憂いたが、もう後の祭り。
その後、午後の座学が始まる時間になり、私達は解散した。
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