第3章 相互依存✿ (傑ルートへ)
それが少し不自然に感じたけれど、二人とも年上だから、後輩にはそういう姿を見せたくないのかなと思い、余計なことは口にしないことにした。
感知しないふりをすることも大事だ。
「お兄ちゃんの任務は次、いつ?」
話題を変えて質問すると、すぐに明後日だと答えてくれた。
「明後日といえば、高専から一番近い神社で夏祭りがありますよね」
横から、思い出したように灰原くんが言う。
懐かしい。
夏油家に引き取られて間もない頃の小学生の時、まだ余所余所しくてビクビクしている私を、義理の両親が近所の神社の夏祭りへ連れて行ってくれた。
お祭りなんて行ったことがなかったから緊張してしまったけど、人生初の浴衣を着せてもらって感動したし、露店に並ぶ食べ物はどれも美味しかった記憶しかない。
あの時、傑お兄ちゃんと半分こして食べた綿菓子の味は私の中では大切で特別なものになっていて、今でも鮮明に覚えていた。
そんなことを考えていると、
「それ、ゆめと俺が一緒に行く約束した」
デザートのプリンをスプーンですくいながら、五条先輩が言った。
「え」と、その場に居た全員が固まる。
私も、思わず石像の如く固まってしまった。
昨夜のことを忘れていたわけではない。
でも、まさか本当に皆の前で宣言されるとは思わなかった。というか、このタイミングで何故と戸惑う私を他所に、五条先輩はスプーンを咥えながら「分かってるよな」という視線を送ってくる。
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