第1章 背徳は蜜の味✿
傑お兄ちゃんは、髪質がしっかりしている黒髪。
切れ長の目は涼しげで、顔立ちも整っている。
身長も高く、恵まれた体躯。基本は物腰の柔らかい対応をするし、気遣いが出来るマメな人だから、実際に高専内外からモテている。
対する私はというと、髪は柔らかめで猫毛に近い。
目の虹彩はお兄ちゃんほどはっきりしていなくて、茶色っぽい。自分では印象がいつもキツく見えるから、目はコンプレックスだった。
背はそんなに高くないが、胸は人並みにあると思い込みたい。
でも兄曰く、「ゆめは猫っぽくて可愛いと思うよ」とのことなので、贔屓目で見ている兄補正では可愛い部類に入るらしい。
好きな人に褒められると、自分の嫌いな部分も許容出来る気がするから不思議だ。
「……」
黙々と食べ進めていると、視線を感じた。家入先輩がこちらを見ていて目が合った。
「えっと……家入先輩、何かありました?」
何か粗相をしただろうか。
「いや、別に。ただ、夏油もシスコンだけど、ゆめもブラコンだよなぁって思ってただけ」
ニヤリとした笑みを浮かべながら言われた言葉に、思わず口の中のアイスを噴き出しそうになった。
慌てて飲み込んだせいで、大福アイスの餅が喉の変なところに引っ掛かり、むせてしまう。
「大丈夫かい?はい、水」
目の前に差し出されたペットボトルを受け取り、ごくりと飲む。チラッとお兄ちゃんを見ると苦笑いしていた。どうしよう恥ずかしすぎる。
「自分もよく言われます!妹と似てないなって。でも、兄からしたら妹は可愛いもんですよ!」
と、助け舟を出してくれたのは、同学年の灰原くんだった。爽やかな笑顔でフォローしてくれるなんて天使か。口の周りにバニラアイス付いてるよ。
「へぇ、そういうもんなんだね。私は兄弟いないから分かんないや」
興味なさげな家入先輩は、アイスの木の棒を咥えて上下に揺らしていた。
食べ終わったアイスのビニール袋を小さく結んでからゴミ箱に投げ入れていた。口の中が甘いのが耐えられないのか、家入先輩はライター片手に椅子から立ち上がる。
→