第13章 白夜の陽炎✿
「あーあ……後悔先に立たず、か」
官能的な熱が引いて冷静になったところで、思わず心の声がこぼれてしまった。
情事後に私が意気消沈している様子を見て何を思ったのか、悟が私の体を引き寄せて、ぎゅっと抱きしめてきた。
彼の体温が心地良くて、私はその胸元に顔を埋めた。
「ゆめ……後悔してる?」
その問いに、私は首を横に振る。
あの時、悟を選んだのは自分だ。
選択を誤ったとは思わない。それでも、もっと違う道があったのではないかと思ってしまうこともある。
先程の呟きの後だったからか、私が否定を示したことに悟は意外だと言いたげな表情をしている。
「私は、傑お兄ちゃんにも幸せになって欲しかった」
血が繋がっていなかったとはいえ、私と傑は兄妹だ。ただ、あのまま関係を続けても、報われなかったと思う。
「お兄ちゃんにも大切な人が出来れば……」
「それは無理でしょ」
私の言葉に被せるように、悟がきっぱり言い切る。
私は目を瞬かせて悟を見上げた。彼はまっすぐ私の目を見て、断言するように言った。
「傑が幸せになる道はゆめの隣にいることだったのに、自ら突き放して逃げた。しかも、相手が絶対に忘れられない方法を取るのがタチ悪いよね。案の定、ゆめはそれで自分に負い目を感じてる」
その言葉に、私は何も言い返せない。
傑お兄ちゃんが私に残してくれた愛情や言葉は、今もまだ心に残っていて、ふとした時に蘇ってきて胸を締めつける。
私に愛を教えてくれた人。そして、私が初めて好きになった人だったから、今も町中で彼の面影を探してしまう。
「ゆめは悪くないよ」
そう言って、悟は私を強く抱きしめた。彼の素肌が直に触れて、その体温に身を委ねる。
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