第13章 白夜の陽炎✿
傑お兄ちゃんのことは、決して憎んではいない。
ただ、悲しい結末になってしまった。
「今は、思い出さなくていい」
視界を彼の手で遮られ、闇が広がる。
「ゆめ、ぜーんぶ忘れなよ」
本当に狡い人。
私を呼ぶ彼の声は、甘くて苦い毒のようだ。
明るく照らす太陽のように私を元気づけてくれるかと思えば、揺れる陽炎のように、時に私を惑わせる。
「ゆめが何も考えないようにしてあげる」
悟は私の目元から手を離すと、私の喉元に口付けた。私はそっと目を閉じながら、縋り付くように抱きついた。
傑お兄ちゃんのことを忘れたいわけじゃない。
でも、思い出に浸って動けなくなってしまうよりかはマシかもしれないと思った。
「……ん……っ、はぁ……」
底なしの快楽に堕ちる。
精液で滑りが良くなっている膣内に、悟が再び陰茎を押し込んだ。私の体をかき抱く身体にしがみつきながら、与えられる熱を享受することに集中する。
「ゆめ……愛してる」
耳元で囁かれる言葉に、思考が溶かされていく。
傑お兄ちゃんのことは忘れられなくても、悟が傍にいてくれる。そう、私を依存させるように甘美な言葉を紡ぎながら。
「私には……も、悟……しかっ、いないから……」
あなたを失ったら、私は生きていけない。
そう思う程に、悟の存在が私の中でどんどん大きくなっている。
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