第13章 白夜の陽炎✿
キス1つで機嫌が直ったようで、悟は覆い被さってきて、私の瞳を覗き込むように視線を合わせてくる。
彼の口元が弧を描いた。
「昼の話の続きだけど、いつになったらゆめは亡くなった親御さんのお墓に連れていってくれんの?」
「……悟も今年のお墓参りに行くの?」
「当たり前。娘さんをたぶらかしたのは僕でーすって、そろそろ墓前に挨拶に行かないと」
そんな戯言を吐きながらニヤリと笑って見せる悟に、私は思わず苦笑した。
高専の教師になった悟は、授業を終えた夕方から任務に赴くこともあるので、日中もろくに会えていない。
それだけ多忙な筈なのに、私が朝に目が覚めると、いつの間にやら隣でぐーすかぴーと腹を出して爆睡していることもある。
そんな彼が私に合わせて外出する機会を設けてくれるのはありがたいことで、それだけ大切にしてくれているのだと思う。
「次の週末あたりはどう?悟は休み?」
「あぁ、お盆か。御三家の会合でジジイ共と顔合わせだから、取りたくない休みを取るハメになる」
「本家の方にお墓参りは行かないの?お宅の御当主様に口説き落とされましたーって、私も挨拶する」
私もニッと笑んでみせると、悟が満面の笑みで私の肩に腕を回して抱きしめてきて、頬ずりされる。
「愛されてるー、僕。将来を約束してるようなもんじゃん。彼氏の実家の墓参り来るとか」
「もー……今日の悟、スキンシップ多い」
「久しぶりにゆめを摂取出来る貴重な日だし」
「摂取って……私は栄養剤か」
悟があまりにも嬉しそうにしているので、私は堪えきれずに思わず笑ってしまった。
すると、悟も釣られるようにして笑い始めるものだから、さらに可笑しくて止まらなくなる。
二人で一頻り笑った後、どちらからともなく唇を重ねた。啄むような口付けを繰り返しながら、お互いの体温を感じ合う。
「ゆめ、好きだよ」
唇が離れると同時に囁かれた言葉に「私も」と頷くと、彼は満足そうな表情を見せてまた唇を重ねてきた。
蕩けるような熱い眼差しで見つめられると、それだけで身体の奥が疼く心地になる。
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