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【呪術廻戦】薄夜の蜉蝣【R18】

第13章 白夜の陽炎✿



「……次の休み、二人でどっか行くか」

照れ隠しなのか、視線が合うや否や、プイッと五条先輩は明後日の方向を向いてしまった。

「町中をブラブラしながら美味しいものでも食べに行きたいです」
「オマエって本当に欲がねーな。行きたいとこは全部連れていってやるのに」
「じゃあ、来年の夏祭りも一緒に行くって約束して下さいね」

会話をしながら携帯を取り出し、ストラップを先輩の前にかざすと、面くらったように青い瞳が瞬きを繰り返す。

「……そんなんでいいなら、毎年約束してやるよ」

繋いでいた手がほどけて、代わりに小指同士が絡まる。得意気に微笑む五条先輩につられて、私も笑顔で指切りげんまんを交わした。



あの時から、紆余曲折。

私が二年の時、灰原くんが任務の最中に亡くなった。

それが直接的な原因ではないにしろ、傑お兄ちゃんと七海くんの中の何かを変える要因にはなったと思う。

段々、五条先輩と傑お兄ちゃんは、呪術師としての在り方、非術師を守ることへの考え方に齟齬が生まれていき、言い争うことも度々あった。

五条先輩たちが卒業を迎えた次の日、傑お兄ちゃんは「旅に出てくる」とメール一通を残し、私たちの前から忽然と姿を消した。

もぬけの殻になった寮、実家の部屋。

すべての痕跡が消えていて、まるで夏油傑という人物が存在していなかったかのようだった。

何がお兄ちゃんの失踪の決定的な原因になったのか、今ではもう分からない。



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